『RustによるWebアプリケーション開発』を読んだ。めちゃくちゃよかった。

かなりいい本だった。設計からリリース・運用までと銘打っているように、なるべく業務の本番環境に近い形でアプリケーション全体を設計する本なので、この手の本によくある「確かに表題のアプリを作るには作ったけど、で、そのあとは?」みたいな迷いが発生しないのがよかった。以下で個人的に良かった点を列挙する。

 

bookclub.kodansha.co.jp

cargo-makeをつかった足回りの整備

本書で作成するアプリはPostgreSQL、Redis、Jaegerコンポーネントに依存し、それぞれをDockerコンテナとして利用する。これらの設定や、ビルド、テストをcargo-makeというRust製のタスクランナーで管理していた。このツールは本書で初めて知ったけど、記法も直観的で書きやすく、アプリを動かすためのいろいろな設定を一元管理できて便利だったので知れてよかった。

 

設計をしっかりやってること

この手の本にしてはめずらしく、よい設計でアプリケーションを作ることを明示的に扱っていて、その一例としてレイヤードアーキテクチャに基づいた設計でアプリケーションを書いている。そのためアプリの規模に対してプロジェクトのディレクトリ構造が(Rustのmod.rs大量発生問題も相まって)かなり仰々しくなっているんだけど、アーキテクチャの勉強としてかなり助かったし、あとからAPIを追加する際もどこに何をかけばいいかはっきりわかって、そのご利益もいくらか体験できた。

 

テストもちゃんと書いてあること


業務コードとしての運用を見据えるならテストコードはさすがに外せないだろう。特にサーバーサイドアプリケーション実装でよく使うような次の2種類のテストがカバーされていたのが助かった。

1つ目はmockを使ったテスト。mockallというクレートを用いて、認証やDBとのインターフェースをmockで置き換え、リクエストハンドラーのテストを行うための設計方法や実装がカバーされている。

2つ目はDBとの接続テスト。sqlxとrstestを用いて、テスト用のDBデータを用いてDB接続部分のテストを行う方法もカバーされている。

また、全体としてrstestクレートを用いた、ボイラープレートコードを減らしてテストを効率的に、見やすく実行するための方法も勉強になった。


メタ情報や余談が多い


利用するクレートの歴史やほかのクレートとの比較など、本書で伝えんとする情報に対する情報や、本筋から少し離れて周辺情報を補足してくれるような描写が比較的多い。こういう情報は、モチベーションの向上や知識の肉付け、関連付けなど学習の観点から非常に重要だと個人的に思っているので、このスタイルはよかった。Rustを好きな人からカジュアルに口頭で開発のやりかたを学んでいるような気持になる。

 

Rustの入門的なパートがない


これはどの言語の初級より先の本にも言えるけど、入門向けの本なんてあふれるほどある(RustなんてThe Book[^1]があるのでなおさら)ので、それを焼き直しみたいなのを貴重な紙面をつかってやらないでほしいという気持ちがある。この本はばっさりそこをカットしていて、入門は他のところで済ませておいてと書いてある。とてもよい。だからこそこれだけ中身の濃い本になっていると思う。同じような形式をとっている本として『Rustの練習帳』とかもある。Rustの未来は明るい。

 

[1] The Book

doc.rust-lang.org

個人開発に役立った


20個くらいのWeb漫画を毎日最新話が更新されているか確認し、更新されていればDiscord通知を送ってくれるbotJavaで書いて1年ほど使ってたんだけど、いい機会なのでRustで書き直したかった。この本に書いてあることをふんだんに援用しながら書くことで、本書の内容もより身についた気がする。具体的には以下の点に反映されている。

  • cargo-makeを使った運用体制の整備
  • レイヤードアーキテクチャを使ったディレクトリ構成
  • cargo workspaceを用いて機能群ごとに分割し、毎日動かす用の更新チェック用binライブラリと、追跡する漫画の設定をするバッチ処理用のbinライブラリの2つのエンドポイントを用意
  • DIの方法

ちなみにつくったのはこんな感じ

GitHub - ose20/manga-update-notifier

 

総括

いい本でした。どの言語もその入門的な本はたくさんあるけど、そこから先へとなると途端に少なくなるし、ましてや仕事でつかえるレベルを見据えるとなるともっと少なくなるので本書は非常に貴重だと思った。こんないい本がRustで出てきてくれたのがうれしかった。執筆に関わったすべての方々、ありがとう...

 

今期のアニメ感想(2024Q3クール)

はじめに

2024年7月-9月クールのアニメが終わったので今期の自分が追っていたアニメの感想をまとめたい。ただ直近3クールの中で最も微妙なクールだったので筆が乗らない...

 

ラインナップ

今期私が最後まで見た作品は以下の通り。

 

注意事項

以下の点に注意されたい。

  • 以下のランキングは主観的な評価であること
  • 今期の全ての作品を見たわけではなく、1話すら見てない作品があること
  • (このブログが今後続くとして、)期が異なるアニメの評価は比較不能であること(例えば今期のA評価が来期B評価より優れていることは意味しない)

 

ランキングと感想

評価: A

負けヒロインが多すぎる

ブコメということで0話切りしてたんだけど、Twitterで何回がバズったツイートが流れてきたので視聴してみたら面白くてハマった作品。適度に口コミを信頼して、自分の先入観を疑うことは大事だと思う。

 

自分がこの作品に感じていた魅力は2つある。1つは敗者(負けヒロイン)のための物語であったこと。自分はラブコメに登場する当て馬がかなり苦手だ。なぜなら、勝者の人生を彩るための道具として脚本に都合よく使われることに対して不快感を覚えるから。本作品は敗者にスポットライトがあたることで、(少なくともアニメで描かれたエピソードの範囲では)そういった脚本の横暴さが表出しないところがよかった。2つ目は作品全体の雰囲気がそこまでラブ一辺倒ではなかったこと。本作品は3人の負けヒロインそれぞれを3,4話かけてフィーチャーしている構成をとっていたが、八奈見杏菜のプロットはコメディタッチが強く、小鞠知花のプロットは恋愛に限らず人に心を開いていく過程を文化祭と軸とした部活動の中での成長として描いていたので、あまり恋愛主体な感じがしなかった。焼塩檸檬のプロットはド王道の恋愛をやっていたので辛かった。

 

懸念点としては、今後負けヒロインたちと主人公の温水の今後の恋愛模様である。今彼の周りに彼女たちがいるのは彼の魅力ではなく、脚本の都合だろう。もし3人が温水に好意を寄せるような展開になるのだとしたら、自分の苦手な敗者のいる恋愛作品と同じになってしまう。

 

本作品はOP、ED共によかったが、特にOPが好きだった。このどこか空元気っぽい振り切った明るさの曲が負けヒロインたちを輝かせていたと思う。

youtu.be

 

makeine-anime.com

 

戦国妖狐

分割3クールの2クール目。第1期で敵として立ちはだかった子供に主人公が切り替わるところが斬新だった。ストーリーのプロット的には際立って面白いところはないんだけど、先が予想できず、飽きずに続きが気になる不思議な作品。キャラ一人一人が魅力的なので、彼らの冒険をずっと見ていたいという気持ちになるからかもしれない。1クール目はニコニコがまだ生きていたのでそっちで見てたんだけど、今までもいくつかアニメ化が実現した同作者の作品が悉く失敗していたので、この『戦国妖狐』はいい会社にアニメ化してもらってよかったと歓喜する原作ファンで溢れかえっていたのを覚えている。2クール目はニコニコでは見られなかったけど、彼らもきっと喜んでくれているでしょう...3クール目もこのまま連続で放送されるけど、それはニコニコで見られるといいな。OPがスルメ曲でめちゃくちゃかっこいいです。

 

youtu.be

 

sengoku-youko.com

真夜中ぱんチ

憎たらしいクズ系主人公が吸血鬼たちと配信チャンネルを作成して、チャンネル登録者100万人を目指す話。尻上がりに面白くなってきて評価を上げた作品。まず第一に、キャラデザが全然オタクに媚びてないので、SNSではバズらないだろうなと思っていたが、その通りだった。配信がメインプロットで、最初から最後まで面白い動画を作るための活動にスポットライトをあてていて、実に現代っぽいアニメだった。主人公も万人受けするようにクリーニングされた感じが全然なく、粗野で愛嬌がなくて憎たらしくて、作品内でも視聴者からめちゃくちゃ嫌われているという設定だったのが挑戦的だった。話の新鮮さと吸血鬼たちも含めてパンチの効いたキャラたちのドタバタコメディがよかった。

 

OPの「ギミギミ」はテンポが良くて耳に残る良曲だが、EDの「編集点」は主人公の真咲の独白っぽい喋り調?の歌い方で独特。特にフルで聴くと歌詞がかなりいいので、もし作品を見てたけどフルは聴いていないという人がいたらぜひ聴いてほしい。

youtu.be

youtu.be

mayopan.jp

評価: B

天穂のサクナヒメ

原作のゲームが出た時にすごくバズっていたので期待が高かったが、期待が高すぎた分割と普通のおもしろさに落ち着いたというイメージ。ストーリーがちゃんとしたゲームのアニメ化って絶対に尺が足りないから薄味にならざるを得ないよなということを考えていた。個人的にはもう少し農作をしたり、おいしそうに米を食べている描写が欲しかったが、後半はバトルがメインだった。とはいえ毎回安定しておもしろく、おひぃさまはずっとかわいかった。

sakuna-anime.com

異世界スーサイド・スクワット

唯一無二性が高く、他のアニメでは味わえない楽しさをたくさんくれた作品。ストーリー自体はそこまでだったけど、とにかく出てるキャラのスター性が高く、彼ら彼女らが好き勝手動いてるだけで大体面白い。

suicidesquad-isekai.com

菜なれ花なれ

自分はかなり好きだったけど、SNSの反応とか見てると思ったより跳ねなかったなという作品。チア名門の主力だった主人公がイップスで跳べなくなって、ひょんなことから集まった人たちで、部活ではなく趣味のチアで誰かを応援していくというところが序盤のプロット。ここまで見た時には安直に部活vs趣味の対立構造を思い浮かべたけど、本編はそうはいかずに、両者がうまく協調して物語が進んでいったのが意外だった。ただいかん登場人物が多くて消化不良になってしまい、いろいろともったいなさを感じるところもあった。

 

OPがかなり好きです。冒頭のところで「きみのためなら死ねる」を思い出すのは自分だけじゃないと思う。

youtu.be

narenare-anime.com

評価: C

グレンダイザーU

UFOロボ グレンダイザー』という、有名なマジンガーシリーズの一作品のリメイク作品。かなり昔の作品特有の展開のわかりやすさや淡白さがあるけど、こういう作品はまさにその部分を楽しむためみたいなところがあると思う。自分はマジンガーシリーズは全然知らないので作品への懐かしさはなかったけど、そういった「昔の作品」への懐かしさを楽しみながら視聴していた。

grendizer-official.net

逃げ上手の若君

今期が始まる前は1番の注目株だったけど、結果としてはかなり微妙だった。本作品が元にする史実は野蛮な時代なので虐殺や略奪が日常茶飯事だが、これをかなり誇張して露悪的に書くものだから、ジャンプ作品特有の唐突に挟まる謎のギャグがこれを茶化しているように見えて毎回なんとも言えない気持ちになる。漫画の中でやる分には読者が読むスピードを調整したり読み飛ばしたりできるからそこまで影響はないのかもしれないけど、映像でやるとキツさがすごい。OPもEDも単体だと非常にいい曲なんだけど、この本編と合わせると魅力が落ちてしまう。本編であれだけ露悪的な敵を描いておきながらOPの2番の冒頭には「仕方ないや 善悪じゃなくて正義同士」という歌詞がある。そんなわけないだろう。「正義の反対はまた別の正義」みたいな安直な相対主義を叫んで絶頂している未熟な学生が頭に浮かぶ。EDのアニメ映像だと敵味方陣営が入り乱れて楽しく「ノーサイド」よろしく踊っているわけだが、本編での悲痛な叫び、怒り、喪失、死別すべてを茶化しているように見えてしまう。繰り返すが曲単体はとてもよい。特にEDは負けヒロインと同じ人だと気づいてびっくりした。

 

最後まで見た作品の中では一番不満点がある作品だったけど、それでも最後まで見られたわけは、作品の芯の部分はちゃんと面白いからだと思う。視聴モチベはそこそこ高い作品で、時代劇の部分に注目すればいい作品ではあると思う。

 

youtu.be

 

youtu.be

 

nigewaka.run

 

評価: D

ダンジョンの中の人

凄腕のソロ冒険者がダンジョンの運営側と接触を持ってしまい、自分も「中の人」としてダンジョンの運営に関わっていくという話。この主人公のダンジョン攻略者がダンジョン飯のマルシルと同じ声優さんだったので、豊作の前期ロスがつらくて縋っていた作品。物語の起伏がほとんどなく、ゆるふわな日常系として分類できると思う。人は普通に死ぬけど。ダンジョンの管理人であるベルが人外レベルで強く、彼女が管理人として行儀の悪い冒険者やダンジョンで働く魔物を「わからせる」話もいくらかあったが、物語を通して視聴者の感情が盛り上がるのがそこくらいしかなかった。

 

dungeon-people.com

番外編

完走はしなかったけど途中までは見た作品は他にもいくらかあるが、いずれもnot for meという感じで脱落しています。

 

終わりに

前期、前前期と比べるとあきらかに自分の琴線に触れる作品がすくなく、少し寂しいクールでした。毎期尋常じゃないほどのアニメが放送されるのに、期ごとの満足度にこれだけの差があるのは不思議な感じ。

今期のアニメ感想(2024Q2クール)

はじめに

2024年4~6月クールのアニメを見終わってしまった。アニメをリアルタイムで再び追い始めたのが今年からなので全く説得力がないんだけどめちゃくちゃ豊作だった気がする。この記事では今期私が見たアニメをランクづけしながらひとことずつ感想を言いたい。

 

ラインナップ

今期私が見たアニメは以下の9作品。

  • 変人のサラダボウル
  • HIGHSPEED Étoile
  • 終末トレインどこへいく?
  • 狼と香辛料
  • となりの妖怪さん
  • 夜のクラゲは泳げない
  • ガールズバンドクライ
  • ダンジョン飯
  • Lv2からチートだった元勇者候補のまったり異世界ライフ

 

注意事項

以下の点に注意されたい。

  • 以下のランキングは主観的な評価であること
  • 上記の9作品以外は観ていないので、評価はしていないこと
  • (このブログが今後続くとして、)期が異なるアニメの評価は比較不能であること(例えば今期のA評価が来期B評価より優れていることは意味しない)

 

ランキングと感想

SS評価

ダンジョン飯

2024Q1から続く2クール目の作品。1話からずっと全てのクオリティが高かった。食という一つのテーマで貫かれた物語を個性あるライオスたち一向と軽妙なコメディが彩っていた。ニコニコが死ぬまではみんなのコメントも愉快で楽しかった。最終話で思い至ったラスボス(?)の倒し方まで「食」に関するもので、どこまでもテーマが一貫していてこの作品のタイトルを見ると謎に感動して泣いてしまう。ライオスパーティの掛け合いをずっと観ていたい。あと本当にマルシルが好きです。

delicious-in-dungeon.com

 

ガールズバンドクライ

今期のダークホース。実は最初は見るつもりがなかったんだけど、1話を観たフォロワーが「終わっても擦り切れるまで見返すんじゃないか」と言っていたのがきっかけで観た。ありがとう。

 

よかった点をいくつかあげる。まず1話の構成が完璧で完全に心を掴まれた。3Dでめちゃくちゃ表情が豊かに動くので超かわいかった、ディズニー映画特有のかわいさを思い出した。井芹仁菜がかっこよくて大好きだった。ライブシーンもどれも迫力がすごくて、特に5話の『視界の隅、朽ちる音』が好きだった。歌い出しで井芹仁菜が自分たちに向けられたスマホのレンズをまっすぐ見つめ返してるところがいい、恐れながらもまっすぐ立ち向かっていく勇気みたいなのを感じた。

 

youtu.be

 

最終話はちょっと駆け足気味だったのが少し残念。それが原因なのか、ヒナの描写もこっちの感情が変化する準備ができなくて露骨な好感度操作に感じてしまった。彼女と仁菜の関係はそんなに深ぼらずに終わっても良かったんじゃないかな...。

 

終わり方も、終わってみるとあの着地の仕方しかなかったような気がする。でもこれからの彼女たちには間違いなく苦難が待ち受けているし、それなのに最後の曲も彼女たちの表情も明るいのが余計にこの先の闇を大きく感じさせてとても苦しい。リアルバンドの方のトゲトゲは、アニメ世界のトゲトゲと非常に似ているけど同一ではないと思ってるので、リアルバンドだけでなく、アニメ世界のトゲトゲが成功しているところまで責任持って見せて欲しい。何よりOP映像で『雑踏、僕らの街』を歌ってる彼女たちのパフォーマンスが死ぬほどかっこいいので、あの未来まで頑張って欲しい。

girls-band-cry.com

 

S評価

変人のサラダボウル

このアニメ、まじでいつも体感5分で終わってすごい。タイトルの通り、個性のある「変人」たちが織りなす日常がオムニバス形式で送られる。異世界転生してきたお姫様、ポンコツ女騎士、探偵事務所の別れさせ工作員、悪徳弁護士。確かに変人だからこその面白さがあるんだけど、宗教家は度を越してるだろと思った。この宗教家の彼女はたくさんの人間の人生を破壊して稼いだ大金で好き勝手暮らしてるんだけど、彼女だけはちょっとだけ引き攣った顔で見てしまう。最終回でなんか捕まってたんだけど、悪徳弁護士がなんとかするんじゃないかな...。

 

でもそんなちょっと倒錯的なところも含めてこの作品の魅了だとは思うし、深夜帯の日常アニメとして本当に面白いので20年くらいアニメやってほしい。変人のサラダボウル、お前は深夜帯のサザエさんになれ。

 

OPとEDも素晴らしいです。特にEDテーマの『今晩の喧嘩』が好きなので聴いてください。

 

youtu.be

 

www.tbs.co.jp

 

HIGHSPEED Étoile(ハイスピード エトワール)

このアニメがこの位置にいるの、序盤の自分に言っても絶対信じてくれないと思う。1話(2話も!)で主人公の見せ場が全くなく、単調なレースシーンと眠くなるほどつまらない実況だけで終わった記憶がある。なので実は2話を観た後に一度切ってる。手持ち無沙汰で暇つぶしに4話を観たらレースを一切せずに微妙に滑り続けるギャグと一生もんじゃを食い続ける話だったんだけど、ニコニコのコメントと一緒に見たらなんか面白くて、そしたら5話で見違えるような超格好いいレースが描かれてあまりのクオリティの差にたまげてしまって虜になっちゃった。パチンコみたいなアニメだと思う。上手くハマった時の爽快感がなまじすごいせいでもったいなさや歯痒さを感じてしまうほど、この作品の天井はずっとずっと高いところにあると見ている。ニコニコがなかったら復帰できてなかったと思うので、ニコニコ動画本当にありがとう。絶対生き返れよ。

 

主人公の輪堂凛がちゃんと活躍できたのって最後の2話だけで、それまではずっと燻って視聴者としてもフラストレーションが溜まっていたので、これだけだと全然足りないし、もっと彼女が活躍しているところを見たい、寂しい、2期欲しいです。

 

余談だけど、レース素人にとって頭文字Dのレース演出の偉大さも痛感した。まず峠なのでオーバーテイクはほとんどなく、あるとしたら勝負を決定づける1回のみみたいな構成になっている。さらにそのレースの勝敗を分けるポイントも視聴者にわかるように説明されるので、どういう要因で勝敗が決したのかがわかるようになってる。オーバーテイクが起こらない、退屈になりがちな追走シーンはドリフトやイケイケのスーパーユーロビートを流していれば全然間が持つし、そもそも車が走ってるアニメーションもかっこいい。

 

この作品もEDが大好き。SCANDALの『ファンファーレ』です。聴いてください。「EDで走るアニメは名作」、間違ってないと思います。

youtu.be

 

highspeed-etoile.com

 

A評価

Lv2からチートだった元勇者候補のまったり異世界ライフ

作品のタイトルから単調ご都合主義俺Tueeee虚無アニメな気がしたのでノーマークだったんだけど、2話でなんとくぎゅが主題歌を歌っていることが判明して手のひらを返したオタクたちがTwitter歓喜に狂っているのに釣られて慌てて1話から見出した。自分は釘宮さんのヒロインにやられた記憶がないけど、その記憶があるオタクたちがブヒりながら(これ死語?(死語って死語?))してるコメントを楽しみながらニコニコで観るのは本当に楽しかった。ニコニコ動画愛してるぜ。

 

声優もめちゃくちゃ豪華だし、この手のタイトルのアニメにありがちな少し質素な作画でもなくちゃんと力が入っていた。ストーリーもちゃんと面白かった。個人的にはバリロッサが好きだった。多分このアニメの中では唯一チョロくない主要女性キャラ(多分ヒロインではない)で、自分の信念があって、魔族との和解・共存に関してもその強い信念と正義感でなかなか割り切ることができない姿が好印象だった。それと同時に、こういったテンポが悪い心情の変化をこの手のアニメで描いてくれることにも驚いた。

 

話題になったのはくぎゅのOPテーマだけど、俺はEDテーマの『ユートピア学概論』がかなり好きです。聴いてください。やっぱりこういうアニメには底抜けに明るい曲が本当に似合う。深夜アニメの原体験みたいな曲で泣けてくる。勇ましさと誠実さをイコールにするのが今っぽくないか?

 

youtu.be

 

lv2-cheat.com

 

Bランク

夜のクラゲは泳げない

配信者、推し、SNSのフォロワー、再生回数、身バレ、扱ってるテーマがかなり今風で、最も"今"を感じる作品だった。ただ、それゆえにいささかインスタントさを感じてしまう部分もあった。主人公たち4人が抱える問題はどれも切実なんだけど、作品が描きたいことに対して尺が足りないのでどうしても説明的になってしまったり、わかりやすく露悪的なキャラが出てきて視聴者側の好感度を操作したり特定の解釈に誘導するようなやり方が多く見られてこちらが感動する準備ができる前に物語が進んでいってしまったのが残念だった。でもやっぱりバラバラな個性の4人がバラバラなまま1つのことに向かっていく様はすごく煌めいていて、特に最終話後半の4人の雰囲気はかなり好きだった。

 

yorukura-anime.com

 

狼と香辛料

既に以前アニメ化されていた名作ということだったの観ていた。確かに昔の作品なだけあってあまり目新しさはないけど、古典を読んだ時のような安定した面白さは感じた。天真爛漫な少女と鈍感な主人公の様式美。ただ俺は"文明"へ信奉のあまりその反動でそうでないものに地雷が多くあり、いかにも中世っぽい幅を利かせた教会や異教徒の弾圧、暴力などで時々地雷が爆発していた。あんまり評価は高くないけど、既に決定されている2期も多分観る。

www.tv-tokyo.co.jp

 

終末トレインどこへいく?

令和のボボボーボ・ボーボボ?ゆめにっき?最初から最後までずっとカオスでよかった。名作と呼べるまではもうちょっと何かが足りないけど、こういうめちゃくちゃなアニメがクールの中にいてくれるのは救いだ。こういうのってクールの(俺の)トップクラスにはならないから1クールで何本も観るような生活をしてないと出会えないので、だからこそこういう生活には価値があると思う。主人公4人組の掛け合いがよかった。あんまり物語上の会話という感じがしなくて、何も進展しないような口喧嘩で平和を感じた。

 

サントラのメインテーマが超いいです。ゆめにっきを一番感じるところ。

youtu.be

 

shumatsu-train.com

 

となりの妖怪さん

人と妖怪が普通に共存している世界の話。最初はほっこり系のアニメだと思ったら後半からめちゃくちゃシリアスでびっくりした。カッパ、一つ目、顔が車の人間、いろんな妖がさも当たり前かのように人間と普通に暮らしたり、喧嘩したり、愛し合ったりしている。人気者でかっこいい男の子のランドセルが赤かったり、登場人物が本当に多様で面白かった。

tonari-no-yokai-san.com

 

終わりに

1クールにアニメをこんなにたくさんリアルタイムで追うなんてこと6,7年していなかったので、全てが懐かしい。今期は本当に面白いアニメが多くて、毎日楽しみがあって本当にありがたかった。もう続きが見られないのがすごく寂しいし、一生終わらないでほしい。今期俺が見たアニメの製作に関わった全ての方に感謝してこのブログを終わります。あと面白いかどうかわからないアニメの立ち上がりの部分の視聴をニコニコ動画のコメント機能がめちゃくちゃ助けてくれたので、早く復活するといいな。頼むから死なないでくれよニコニコ動画

読書記録:津田幸男『英語支配とことばの平等』

はじめに

『英語支配とことばの平等』という本を読んだのでその感想を適当にまとめたい。この本は、世界で英語が特権的な立ち位置を獲得していることの問題点とそれへ対処法を述べ、さらに進んで「ことばの平等」という概念を浸透させようと訴える本である。自分もどちらかというと英語が傲慢にふんぞりかえっている現状にいくらか思うところがあるので、その道の専門家がどのようなことを考えているのか知りたくて今回読むに至った。

 

本の概要

本書は3部構成からなる。第1部では英語が事実上の世界標準語として扱われていることによる問題を6つ挙げる。第2部ではこの状況への対応策として、日本が取れる施策を国内、国際のそれぞれの分野で具体例を挙げる。そして第3部では、「ことばの平等」というより原理、原則的な概念に目を向けて、これを推し進めていくための取り組みの必要性を訴える。

 

総評

主張がシンプルで一貫しているのでかなり読みやすかった。あと、著者の思想の強さが隠しきれないというか、流石にそれは言い過ぎだろうみたいな強火の主張がたまに紛れ込んでるのが面白かった。ただ、客観的な事実のみからしか何かを言うことができないとしたらかなり幅が狭まってしまう気がするので、ちゃんと区別ができていれば問題ないのかなとか考えながら読んでた(あとそもそもこれ論文じゃないし)。

 

切り口別の雑感

著者の提案のいくつかは構造的に無理がある

英語は英語を話せるものとそうでないもの、あるいは英語を母語としているものとそうでないものの間に強烈な不平等をもたらし、差別の温床となり、非英語圏の文化や精神をじわじわと蝕んでいくということには同意しつつも、著者がそれに対抗するために提案した方法のいくつかは構造的に実現性が低いと感じた。

基本的に、対価や強制力のない「呼びかけ」には意味がないだろう。なぜならそれで呼びかけに従うなら、そもそも呼びかけをする前からそれが実践されているから。本書でも利用者が少ない言語に対して「やさしいまなざし」を向けろと呼びかけをしているけど、まさにこの理由から成果は得られないと思う。他にも例えば著者は、英語で話しかけられたとしても、そこが日本なら堂々と日本語で話すべきだし、英語で返答できないことに申し訳なさを感じる必要もないと言っている。これは部分的には実践できるが、一般的には難しいと思う。例えば需要の少なくない部分をを英語圏(あるいは英語話者)の人に頼っている観光業のような存在を仮定してみる(このような状況は特に珍しくもないだろう)。このようなものにとって、英語で話しかけてくる客に英語で応対することは、お構いなしに日本語で応対するよりも得である。競合に需要を奪われないためにも、英語によるサポート体制を整える誘惑には抗えない。

構造的に無理というのは、「北風と太陽」における北風をしているということである。旅人の服を脱がせるならば、北風を吹かせて無理やり服を引き剥がそうとするのではなく、暖かい日差しで燦々と照りつけて旅人が自発的に脱ぎたくなるような状況を作り出さないといけない。

 

英語支配へのカウンターとして機能しそうなこと

本書では特に述べられていなかったが、英語帝国主義と呼べる状況に対して北風と太陽における太陽をしている例は恐らくたくさんある。つまり、英語の勢力拡大の抑止を、それ自身を目的とせずに達成しているものがある。

例えば日本のアニメや漫画に触れるために日本語を学ぶ海外の人の存在はその一例だと思う。彼ら彼女らは別に英語帝国主義を打倒するためではなく、自身の娯楽のために日本語を学んでいるだけだが、それが結果的に英語帝国主義へのカウンターになっている。他にもK-POPや韓ドラを通じて韓国に興味を持った若者が韓国語を勉強するのも当てはまる。

私が好きなアークナイツの話をすると、このゲームが面白いから、あるいは本国で先行配信されている内容に触れたいからという理由で中国語を勉強している人が周りにいる。アークナイツの世界は我々の世界をモチーフにしたものとなっており、それをストーリー、楽曲、ゲーム上の歴史などを通して恐ろしいほどまでに丁寧に描写するので、実は中国語どころか世界の歴史や言語について興味がそそられる。これは本書の第3部で提唱される「ことばの平等」にも意図せず貢献していると言える。

 

人権として公理化するという方面

英語帝国主義に終止符を打ち、ことばの平等を達成するための提唱された施策の多くは構造的な非現実性を持つものが多いが、この問題をすっ飛ばす方法がある。それはことばの平等を、基本的人権と同様に、証明、説得の必要のない約束事、公理として認めるということである。

基本的人権は、その存在が証明されたわけではなく、それを認めた上で世界秩序を構築した方が、より良い世界が作れるという信念のもとに認められた約束事だと思っているが、ことばの平等もこのように扱う。ただそのためにはもちろん、これを公理として世界に認めてもらうという別の壁が立ちはだかる。そのためには次の2つが有効であると思う。

まず1つ目は、ことばの平等とは、既に基本的人権に内包されるものだと主張することである。本書でも述べられているように、世界人権宣言や国連憲章などでは、人々が言語による差別を受けないことを規定している。つまり、我々が基本的人権を認めねばならないのと同様に、ことばの平等も認めねばならないと迫るわけである。

2つ目は、これを認めないと、どのような差別や不平等が助長されるかということを地道な調査によって客観的に明らかにすることである。それは例えば、英語を母語としない人が母語とする人に比べて人生の時間をどれだけ学習に捧げないといけないかとか、経済的な要請によって半ば強制的に英語を学ばざるを得なかったりすることによる損失や、それによって母国語が消滅してしまったりとかである。

 

終わりに

200ページちょっとしかない読みやすい本なのに感想記事書こうとすると全然書けないし大変ということがわかった。

 

アークナイツ13章「悪兆渦流」感想

 

概要

本記事はアークナイツメインストーリー13章「悪兆渦流」の感想記事です。注意事項は以下の通りです。

この記事がやること

  • 膨大な13章から自分が気になった箇所について取り上げて考えをまとめる

この記事がやらないこと

  • ストーリー全体をまとめて時系列やテーマなどを通して解説をする(他に素晴らしい方がやってくれているので)
  • 他のイベントや史実と詳細に突き合わせることで考察を試みる(む、難しいので)

章全体の感想

陣営同士の勢力関係の点から見ると、ヴィクトリアに来てから大局的には防戦一方で、特に前章では自救軍の基地が壊滅的な損害を受け散り散りなっていたロドス側陣営が、それぞれの戦いを切り抜けて再集結。ブラッドブルードの大君を打ち倒し反撃の切り札となり得るライフボーンを奪取したことで反撃の狼煙をようやく上げられたのかなという印象でした。12章まではひたすらプロットに殴られ続けて読むのが本当に辛かったんですが、13章でそれが少しだけ和らいだ気がします。

 

もともとヴィクトリア編にて利害が衝突しうる主要な団体は以下の4つがあると思っています。

  • ロドス(+ロンディニウム市民自救軍のようなヴィクトリア市民有志たち)
  • ロンディニウムを占拠しているサルカズ
  • これを警戒しつつもお互いが牽制をしているせいで動きが遅いヴィクトリア貴族陣営
  • ターラー人の復権を目指すダブリン

さらにここへ、今のところ大きな利害衝突はしそうにないけど、感染者、あるいは被差別者の生きる道を探し求める新生レユニオンが入ります。以上のように非常にたくさんの陣営が絡んでいるんですが、今回詳しく描写されたのはロドスとサルカズの間の勢力関係の変化と、レユニオンの目的意識の変容くらいなので、事態の収束にはまだ暫くかかりそうな気がします。

 

9章から始まった2部のボリュームも既にえらいことになっていて、現状ヴィクトリア要素はあまり描かれておらずロドスとサルカズ間の描写が多いので、一旦サルカズとの問題に一応の決着をつけて2部を終幕させ、その後のヴィクトリアの問題(貴族、ダブリン、ヴィーナたちの三すくみになるのかな)は第3部やサイドストーリーで描かれるのかもしれないですね。

 

特に印象に残ったこと

本説では13章の中で特に印象に残った箇所をピックアップして感じたことをまとめます。

冒頭のカジミエーシュの記者の会話

13-1と言えば思想統制ではなく食料を調達するために焚書を行うサルカズ兵たちの一幕も印象でしたが、私はこちらも印象に残りました。非常に風刺が効いててきっついなぁと思いながら読んでました。現在進行形で行われている人権の蹂躙も、略奪や虐殺も、その外にいる彼らからしたら、「どうしたら購買意欲を掻き立て消費を促して自分たちの財布を潤すことができるか」という観点において他のゴシップなどと変わらないということが表現されています。あらゆるものの価値を貨幣で数値化することにより市場による取引を推進しようとする商業主義が内包する危うさが、2人の記者のこんな短い会話で端的に表現されていると思います。彼らは自分の明日の生活を守るために目の前の仕事で成果を上げなければならないが、成果を上げることと遠くで起こっている惨事の解決に助力することが一致していないという市場の構造ゆえに起きる問題だと思います。

カジミエーシュの記者の会話
新しいテキスト演出と、それとドクターの関係

私の勘違いでなければ今章から、独白や地の文を中心として、従来の画面下の数行だけに留まらずに画面全体を使ってテキストを表示する演出が入ったと思います。

画面全体に表示されるテキスト

これはまず実用的な面から言って非常にありがたかったです。文章量がかなり多いタイプのゲームなので、画面下でちまちま表示されるよりはドカっと画面いっぱいに表示された方が個人的には読み易く感じました。また、この演出ができるようになったことにつられてかはわからないですが、キャラが心のうちを述べる演出が増えたような気がします(気のせいかも)。

 

さらにドクターが他者の独白的なものの中でひとりでに喋っている箇所もあって、ドクターの人格がプレイヤーから離れていってるのかな?と訝しんだのですが、1つ前の引用画像ではドクターのことを指して「あなた」と言っているし、これより後の時系列であるたくさんのサイドストーリー(例えば孤星とか)でもこのようなことは感じなかったので、きっと思い違いでしょう。

 

この演出ができるようになったことでドクター以外が一人称となった独白がたくさん出てきてよりストーリーを俯瞰的に楽しめるようになりました。アークナイツは様々な立場にいる人たちをそれぞれひどく丁寧に描写することで出来事をより多面的に捉えてもらおうとする物語だと思うので、この演出とシナジーがあると感じました。

一人称視点がLogosの状態でひとりでに喋るドクター
Wについて

今回のストーリーで、Wのことをもう一段深く好きになれたという話です。私はアークナイツをリリース1ヶ月後くらいからプレイしているのですが、そのきっかけとなったのがWでした。当時はまだハマれるスマホゲーを探している最中で、アークナイツも5章あたりで引き込まれるまでは様子見という感じでした。そんな中では好きな造形のキャラがいるかどうかはモチベーションの維持に大きく貢献しますし、その唯一のキャラがWだった当時の自分にとっては、Wがこのアークナイツの広大な世界に連れてきてくれたと言っても過言ではないです。

 

初めこそ「自分の意思を持ち、その信念のために他者を害するキャラ立ちする敵側の女性キャラ」という記号から好きになったWでしたが、闇夜イベや7、8章でその内面の描写が増えてきたことで、Wという人間自体が魅力的に感じるようになりました。

8章での一幕

13章では彼女のことをよく知るヘドリー、イネスと共に行動することで、否応なしに自分の心と向き合わざるを得なくなる場面がありました。13-17でヘドリーに、今のテレジアに対する自分の疑念を突かれた時のことです。狂人の仮面を被ることによって自分の心を外界から守っている(と解釈している)Wがそれを外して驚くほど純真な本心が吐露されるところがとても好きで、今回も彼女がどれだけテレジアのことを慕っているか、そして彼女がサルカズの未来がどうあって欲しいと考えているかを垣間見ることができてよかったです。また今回Wは文字の読み書きができないことも明かされました。闇夜で彼女の境遇を知っていると察するにあまりあります。おそらく物心ついた時から裏切りと殺戮しか生きる手段がなかった彼女がここまでの純真さを備えているのは奇跡に近いと思うんですが、それができたのはきっとヘドリー、イネスの部隊に拾われたからなんだろうなと思ってます。

13-17での一幕

イネスのセリフでも匂わされていたように、今後Wの内面に大きな変化があり、さらに成長した姿を見せてくれるような気がします。個人的には読み書きができるようになって、いろんな本を読んでいろんな思索に耽って欲しいです。そしてそれを受けて彼女が何を思ったのか、今後の物語で少しても教えてくれると嬉しいです。

レユニオンとGuard君あれこれ

13章はレユニオンにもたくさんスポットライトが当たったおかげで、彼らがどのような日常を送っているのかを想像しやすくなりました。医療品も食料も安定に確保できない中でさらに行き場をなくした人たちを受け入れていくので彼らは困窮するばかりです。さらに、受け入れられる人たちの多くは大切なものをなくしてしまったり、あるいは最初からそんなものを持つことすらできなかった人たちで、もしかしたら冷静に物事を考える余裕がなくなって攻撃的だったり、新たなトラブルを呼び込む可能性も低くはないでしょう。彼らの掲げている名前やその集団が持つ属性から憎悪や差別を向けられることは少なくなく、望まぬ武力衝突も珍しくない。現代の読者の環境から見ればとても冷静でいられるような状況ではないし、自分だったらとっくに心が折れているだろうと感じることばかりでした。それでもレユニオンの人たち(特にナイン、レイド、パーシヴァル、Guardなどのネームドキャラ)は冷静さを失わず、感情を荒立てず、淡々とことにあたっていたのがすごく印象的でした。今回Guard君のビジュアルが公開されて、その表情が思いの外疲れ切っている様子だったのがこの印象に拍車をかけました。きっと、日常的に見舞われる苦難にいちいち感情的になっていると心がもたないからというのもあると思いますが、彼女たちの紛れもない強さも感じました。

 

密造工場にて

 

今回のレユニオンのことを考えると、13-2の戦闘後のチャプターで2曲目に使われたBGMのことがいつも頭によぎります。安らかではあるけどどこか暗い感じがして、曲調に上がり目もなく淡々と同じことが続いていく、自分の直観で表現するなら「優しい絶望」とでも言えるような曲で、上述したレユニオンの状況にひどくあってしまっているようでした。でもすごく好きです。ちょっと違うんですが、某サイコホラーゲームの「流れとよどみ」を思い出しました。なお、この曲は今回が初登場だと思うのですが、検索しても曲名が出てこないので、毎回13-2戦闘後のチャプターを再生してこの曲を聴いています。何か情報を持っている方がいたら教えてくれると嬉しいです。

 

そして最後にGuard君ですよね。

Guardの心象と最期の景色

彼が冒頭に見た心象と彼が最期に見た景色で使われているセリフが同じです。心象の方でこの太陽は、Ace、Scout、パトリオットが成し遂げたことの比喩として光り輝いていました。彼を覆い尽くしたこの炎も太陽であること、そして彼が最後に遺した言葉をナインが何度も繰り返し聴き、レユニオンの行く道が定まったこと。これらを考慮すれば、Guardという人間が新生レユニオンに何をもたらしたのか、彼ら彼女らにとってGuard君がどういう存在だったのかを窺い知ることができます。彼は当初は顔も名前もなかった無名氏で、素顔が公開された後も特別大きな力を得たわけではない、能力的には極々普通の人なんだと思います。そんな平凡な彼だから、最後は彼が目指した太陽に、光り輝く熱い炎に潰されてしまったかもしれないけれど、そんな平凡な彼だからこそ、等身大のまま苦難に向き合っていた姿を私は忘れることができません。

 

最後に

13章ではロドス側が少し勢力を盛り返す形になったけど、読み終わった後のスッキリ感はやっぱり全然なかったです。今後アーミヤたちがどんな絶望的な状況を跳ね除けたとしても、その道中で失ったものは帰ってこず、それはあまりにも多く、そしてその描写も非常に丁寧にするアークナイツだから、そういう意味でアークナイツは絶望を描く物語なんじゃないかと思います。露悪的に絶望を描いて描きっぱなしにするのではないだけで、暗い話ではあると思います。でもそれでよくて、この恐ろしく丁寧に描写される世界を俯瞰することでたくさんの思考のきっかけ、感情の揺らぎをもたらしてくれるアークナイツの物語が大好きです。

 

また、個別に取り上げた箇所以外にも見どころはまだまだたくさんあって、目の付け所は人によって全然違うと思います。だからこそその人の着眼点には価値があるので、皆さんのお気に入りのお話も教えてもらえたらと思います。

 

以上です。

新卒1年目の振り返り

概要

新卒のソフトウェアエンジニアとして就職して1年が経過するのでこれまでを振り返る。

 

結論

  • 入社後しばらく抱いていた「満足に仕事ができないんじゃないか」という不安の多くは解消され、日々の業務をこなす程度ならそこまで難しくはないと感じた
  • チーム向けのツールを勝手に作っていたら正式な業務としてチームの運用ツールを好きな言語で書けることになるなど、少し背伸びした成功体験も得られた
  • とはいえまだまだできないことは大量にあり、終わりのない道を歩き始めたばかり(ヒカルの碁

 

筆者の背景

  • 大学入学後に競プロからプログラミングに入門して、数理論理学に対する興味から型システムに惹かれて大学院で専攻変更
  • ハッカソンインターン経験なし
 

振り返り詳細

この1年をいくつかのトピックに分けて振り返る。試験的に、今回は意識して散文チックにしてみたい。そのため話題があちらこちらへと飛び火する。
 

技術研修はありがたい

配属される前に数ヶ月の技術研修があった。これがかなり良かった気がする。内容は社内外の技術を使って、フロントエンド、バックエンド、DBを使ったWebアプリケーションを作成するのが主なものだった。この研修を受ける前の私と言えば、フロントエンドとバックエンドの違いを自分の言葉で全く言語化できず、CI/CDのやり方もてんで知らず、REST APIも多分わからない、つまりはど素人だったわけだけど、この一気通貫で概要をさらう研修のおかげでWeb開発の概観に対する直観を得ることができ、それまでWeb開発に対して漠然と抱えていたコンプレックスのようなものが多少解消されたように感じた。多くのプロダクトは、それ自体が複数のコンポーネントから成り立っており、このコンポーネントの区切り方は大体共通認識があること、だからこそそれぞれのコンポーネント間のやり取りには汎用的なAPIが既に提供されており、我々はその使い方を都度調べながら繋ぎ合わせることでシステムを組み上げることができるという認識を得た。そして、このコンポーネントへの分解の仕方、各コンポーネントの一般的な組み立て方、それらの間の連携の仕方は独創性というよりは覚えゲーなところ(特に初期段階)があり、よく言われる「(ソフトウェア)エンジニアは覚えることが多くて大変」という主張の、覚える対象が何を指しているのかということについて自分なりの答え合わせができた。Web開発に対して感じていたハードルが下がったことで何か作ってみたいという気になり、次のようなものを作成した。
  • 漫画更新bot
    • DBに登録されたweb漫画の最新話が更新されたかをチェックしに行って、更新があった場合はDiscordに通知するプログラム
    • cronで毎日1回実行している
    • 運用中に漫画が掲載される url と html の構造が変わって処理が失敗したことがあり、そういったイレギュラーに気づけるようにロギングや通知設定を見直した。作り捨てではなく使い続けるからこそ見つかる改善点などに気づけて楽しかった
  • アークナイツの便利ツール
    • アークナイツという私の生きがいとなるゲームがある。このゲームに関するREST APIサーバと、これUIを通して利用できるツールを作った
    • html とcss はほとんどわからないけど ChatGPT に聞いたらなんとかなったので、本当にいい時代に生まれてきたと感じた
 

配属後の仕事の話

技術研修の後は配属先でOJTが始まった。配属されたチームの扱ってるコンポーネントは多く、必要になる技術領域も馴染みがなくて最初はキャッチアップにかなり苦労した。自分がわからないことを言語化・構造化してはそれをメンバーに尋ねるというサイクルをよく回したが、チームの方は嫌な顔せず毎回丁寧に回答してくれたのでありがたかった。様々なタスクに入りながら過ごしてしばらくしたあと、業務には、似たようなタスクが不定期にやってくることを実感するようになった。学生の頃の授業や部活の練習のように、習熟を目的として集中的に反復するのではなく、タスクは仕事上必要になったタイミングで発生し、それらのほとんどは似たもの同士に分類できる(その分類の種類は仕事による)。従って、一度経験したタスクを次の似たようなタスクに活かすためのメカニズムを外部に任せることはできない。ここで役に立ったのが自分のためのメモあるいはドキュメントだった。世間ではメモの大切さが謳われ、メモの取り方の本が出たりもしているが、自分はそれを大したことだとは思わず今まで一度もメモらしいメモをとったことがなかった。やってみると、メモは仕事以外にも色々役に立ちそうなことがわかってきた。たとえばTwitterのTLにはいつも有益だったり面白そうな情報が出回っているが、それをいつでもその時に摂取できるわけではない。一旦どこかにストックしておいて、後から適切なクエリによってそれを引っ張り出せるようになっているとありがたい。このクエリがディレクトリ構造におけるファイルパスのようなものだと管理が破綻するので、ではタグでやるのはどうかということで今はObsidianを試している。ただしやっぱり「いつ」「何を」メモから引っ張り出すかは本当に難しいので、この部分はAIがいつかやってくれるといいなと思う。一人一人の人生経験だけをDBのデータとして使い適切なタイミングで適切な情報を思い出させてくれる秘書みたいなAIができたらいいな。てか作ってみたい。業務効率化アプリとしての可能性を感じています。
 

働いてみての気づき色々

ソフトウェアエンジニアとしてチームで働くようになって、いくつか気づいたことを記す。
 
まずはスクラム開発?について。チームではスクラム開発を採用しているが、自分にはこれが初めてのスクラム開発(というか初めてのチーム開発)だった。ソフトウェアエンジニアリングに限らず、チームで何かを達成する際の問題解決フレームワークとして色々優れているなというのが全般的な感想で、たとえば中高生の学園祭の準備とか集団で何かを決めるときにこのやり方を知っていたらもっと上手くできたかもしれないと思った。スクラムは大雑把にいうと、こいつが関心のある対象のうち最小のものであるタスクを、チームの誰もが不確実性が低い状態で遂行可能にし続けることが目的で、そのためにリファインメントで曖昧な課題を噛み砕いて具体的な受け入れ条件の定まったアイテム(タスクの集合からなる)にしたり、日々のデイリーなどの振り返りで現状の進捗や肌感を共有しながらタスクの再定義や分配を行なっている印象を持った。ただこれができるかどうかはチームの抱えている課題の難易度と、チームメンバーの能力に依存するので、上述のような理想状態でいられることはほとんどないと思う。たとえばリファインメント対象が難しいものであれば、それを噛み砕ける一部の優秀なメンバーへの負担が大きくなってしまうし、チームメンバーのスキルがスクラムの要求水準に満たなければ、タスクを見積られた時間内に終わらせることは難しくなり、それへの適応として当人はプランニングの時点での稼働可能時間を少なく見積もるようになったり、デイリーでのタスクの再振分が頻発することで、スクラムが期待するようなアプローチにイレギュラーが発生する。ただこのような問題はおそらくありふれているので、妥当な解決策があるかもしれない。スクラムに関する有名な本とかもいくつかある気がするので、いつか読んでみたいかも。
 
続いてこれは社会的責任を負った企業のエンジニアなら普通なのかもしれないが、システムの安全性にすごく気を遣っていると感じた。具体的には、何をするにしてもその正常性の確認のために監視設定を入れたり、様々な観点から結合テストを行なったり、リリースがうまくいかなかった場合の手順やその遂行可能性なども厳しくチェックしていた。一方でこれらが全てプロダクトの安全性に寄与しているのか、しているとしてそれはどの程度なのかはまだ正直よくわからない。ただ静的検証の技術はまだまだ一般的ではない(そもそも目的の性質を証明する方法は現時点でも未解明かもしれない)ので泥臭く良いテストを考えるしかなさそう。
 

とある挫折、そしてRustという救済の光

社会人になってから経験したちょっとした挫折は、自分が技術的に興味のあることがほとんど共感されないことだった。最初に述べた通り自分は競プロからCSの門戸を叩いて、そこから同じく興味のあった数理論理学からプログラミング言語理論と型システムの分野にいきなりジャンプした珍しいタイプの人間なので、視野やスキルセットがかなり偏っている。好きな分野を答えてもそこから話を広げられず申し訳ない思いをしたことも少なからずあった。自分は何らかの性質を演繹によって保証することに興味があり、その保証された「安心な領域」を社会全体に広げていくことで世の中が生きやすくなったらいいと考えている。そのための手段として世界を記述するプログラミング言語に注目していて、OCamlHaskellが好きだ。一方でプログラミング言語は非常に強い正の外部性を持つ。つまり、その言語がもたらす恩恵は、その言語自体の本質的な魅力だけでなく、それを使っている人の数、周辺ツールやエコシステムなどに大きく影響を受ける。一般的に広く使われている言語に比べるとOCamlHaskellにはそのような強みは薄く、この外部性の恩恵に与れないまま、業務領域へのキャッチアップと並行してこれらの言語を使ってプログラムを書き続けることは、自分の能力ではかなり限界があると感じていた。
 
あるときRustに出会った。正確に言えばRust自体はずっと前から認知していたが、何かのきっかけでRustに入門した。

 

まず、ヴァリアント型やパターン(もちろんワイルドカードパターンもある)マッチ構文、式指向なところがプリミティブとして備わっていることがすごく好き。こういった機能がプリミティブとして提供されているなら構文自体もその旨みを引き出そうとした設計になっていて一貫性があって扱いやすいという信念がある。逆にそうでなく、既存の機能をこう組み合わせればこういうこと"も"できるよといった言語では、まずそのテクニックを知っていないとできないし、それがデザイン(?)パターンとして認知されるまで時間がかかるし、なっても認知コストがかかるので、前者の言語との間にはやはり深い深い溝がある。Haskellなどと比べると抽象性はやや劣るけど、逆に、Haskellだと抽象性が高すぎて魔法にしか見えないところをRustは愚直にやっているところがあったりして、Rustのレイヤは一つ下なんじゃないかなという直観がある。だからこそOSや組み込みシステムなどのレイヤでも人気があるのだろうし自分も低レイヤには興味があるのであわよくばRustに連れて行ってほしい。あとRustの所有権やlifetimeの概念が自分にとってはすごくよかった。何でよかったのかというと、自分が修士の時に研究していたテーマと類似点があったから。自分はある特定の言語の型システムの設計とその型安全性の証明をしていたのだが、この体系で安全な型をつけるには変数が存在できるスコープを追跡する必要があり、型にもそのスコープが現れた。自分の体系はずっとひどくお粗末な気がしていたし、プログラマがスコープを書かないといけない言語なんか実用的じゃないんじゃないと思っていたけど、それをRustという人気言語が反証してくれた(Rustにはlifetimeパラメータが型に現れることがある)のが嬉しかった。もちろん自分の研究していた体系は素人のtoy programming languageなのでRustの足元にも及ばないし、そもそも型安全性の証明ができた(と自分が思った)のは修論執筆直前で学会の査読に通ったというわけでもないので客観的な事実としてはただの思い込みなんだけど、Rustに親近感と愛着を覚えるにはそれで十分だった。
 
Rustはその難しいという評判と打って変わって、周辺ツールやドキュメントは恐ろしく丁寧なところも好きだ。前述したようにプログラミング言語が普及するには正の外部性をうまく使うことが大事だ。開発に便利なツールチェインや丁寧なドキュメントは利用者を増やすことに大きく貢献する。自分もRust自身やRustを使った何かについて発信することで、いろんな人が心地よくRustで開発できるような環境づくりに少しでも貢献できたらと思う。
 
また、業務とRustの関わりだと、チーム内のとあるオペレーションを自動化するツールをRustで作って共有した。このおかげかはわからないが、今度は業務時間としてチームとして進める別のオペレーションを補助するツールをRustで作れることになった。今はどちらのツールも既に作業に組み込まれていて、自分にしてはすごくいい体験をさせてもらえてありがたかった。
 

来年度やりたいこと

今年度の振り返りとしてはこれくらいで、次は来年度にやりたいことを簡単に書き出す。
まず仕事がもっとできるようになりたい。チームのプロダクトやそれが依拠している技術に対する理解はまだまだ不足している部分があるので、引き続きできることを増やしていきたい。仕事はできないよりできた方が楽しいからね。一方で、自分のやりたいことと仕事の内容が完全に一致しているわけじゃないので、ちゃんと自分の興味に費やす時間も守っていきたい。あと友達を増やしたい。基本的に超インドア人間で仕事もリモートワークなのでプライベートで人とコミュニケーションを取る機会が非常に少ない。ただ友達を増やそうとして友達を作るのは難しいし自分にも向いていないので、自分が好きなコンテンツに関するコミュニケーションに対してもっと積極的に足を踏み入れていくところから始めたい。
 
終わりです。
 

大学院から情報科学系分野を専攻にした人間のエンジニア新卒就活雑感

tl;dr

私のこと

就活結果

  • 受けた企業数:5社
  • 内定:3社
  • 途中辞退:1社
  • コーディングテスト落ち:1社

 

はじめに

ここからはもう少し詳しく就活の体験記を書きます。私は社会科学系の学部在籍時に数理論理学と競プロにハマって,特に型理論に関して詳しくなりたいと思って他大学他分野に院進した人間です。冒頭の私の状態からソフトウェアエンジニアとしての就職は難しいかなと思っていたのですが,なんとかなりました(内定を1つ以上得られた)。これはその備忘録です。

 

就活期間

M1の夏頃にインターンのことを考え始めました。当時は,ただでさえ修士から新しい分野で研究を始めるという遅いスタートを切っているので,これ以上研究以外のことに時間を割きたくないという気持ちと,そうはいっても一つもインターンに行かないで本選考は大丈夫なのかという不安のジレンマを抱えていました。結果,特別魅力的だった1社にのみ応募してダメだったら割り切ることにしました。そして落ちました。

11月頃から各企業が本選考の受付を開始していたと思います。私も思い出したように就活を再開しました。いくつかの企業にエントリーし,初めて内定が出たのが1月末,結局他の企業の結果も聞くために3月末まで就活を続けました。

 

企業選びの基準

次の2つの基準で選考に参加する企業を選びました。

  • 型システムおよび静的型付き言語が好きなので,そういった技術との関わりが多いこと
  • 提供している商品やサービスが社会の役に立っていると感じられる,あるいは好きになれること

自分のモチベーションを保ち続けるために最も重要な2つのことがこれだと思いました。

私がそもそも専攻を変えてまで修士に来た理由は数理論理学と型システムに衝撃を受けて惚れ込んだからなので,そういった技術と関連があるところで仕事ができるかどうかは死活問題でした。ゆくゆくは色々な技術に触れていくことになると思いますが,最初の仕事としては自分のこだわりが特別強いところから始めた方がよいとの判断からです。あとは単純に自分の知識が多少活かせるというのもあります。またそういった企業の探し方として信頼していたのが,自分と同様の分野の人がいる企業を探すという方法でした。一口にエンジニアと言ってもその人たちの選好は様々だと思います。しかし同じ分野の人たちならばある種のこだわりや価値観を一部共有でき,それは企業選びの際に参考になります。実際ありがたいことに選考の途中で私と同じ分野出身の方とお話する機会を設けていただき,それが後悔のない意思決定につながったと感じています。

また,私自身の志向として公共の利益に貢献できると嬉しいというのがあって,自分の関わっている製品が,できるだけ特定の集団によらない様々な人の役に立っていたり,あるいは特定の集団であっても,理不尽な不利益(定義は非常に難しいですが)を被っている人たちの役に立っていたりするんだと自信を持って言えるのであれば,モチベーションは自然と沸き続けると予想しました。

基準はこの2つ以外にももちろんあったと思います。たとえば私は持病があって働く環境に関するこだわりが普通より多少強く,そういった点なども考慮しました。

 

競プロは役に立ったか

立ちました。どの企業の選考にもコーディングテストがありましたが,AtCoderのABCとかの問題とだいぶ傾向が似ていて,ほとんどの問題は苦労することなく解くことができました。コーディングテストで落ちた1社については,問題の内容がWeb関連に大きく寄っていたのが原因です。

 

就活,なんか思ってたのと違った

就活をする前とした後で印象が大きく変わりました。就活する前は,私は圧倒的な高みにいる面接官から一方的に評価を下される立場にあり,面接官は終始高圧的な態度でこちらと相対するものだと思っていました。しかし実際に面接を受けてみると,面接官は表情が豊かで相槌を頻繁に打ってくれる方が多く,コミュニケーションは非常に楽しいものでした。面接官の方からは,面接はお互いが対等な立場にあり,ミスマッチを防ぐために自社のことを誠実に伝えようという意図が感じられましたし,私も自身のことを誠実に話して,それで落ちたらしょうがないと思うようになりました。

就活の面接は自己分析と強みのアピールをしないといけないといった認識があったのですが,事前に話すことを考えたりはしませんでした。基本的にはどの選考でも就活(企業選び)の軸が重要視されている気がして,そこから話が膨らんでいくので,その意思決定基準さえしっかりしていれば特に会話に困ることはありませんでした。あとは大学入学以降のできごと(競プロにハマったり修士に行くことにしたり)を振り返ってその意思決定に至る経緯やその際考慮したことなどを振り返るといった,いわゆる自分語りを促されることが多くありました。私は自分語りは嫌いではないですし,それが許される機会は貴重ですので気持ちよく喋りました。前述のように面接官はミスマッチを防ぐために私が自社でうまくやっていけそうな人かを知る必要があり,そのために色々と人となりを話して欲しかったのだと思います。したがって私も相手が知りたそうな情報を意識しながら適切だと思う切り口で自分語りをした記憶があります。

あとはこのご時世だからか,選考はすべて私服のオンライン面接で行われました。気楽に臨めてよかったです。

面接を担当してくださったほとんどすべての方とのコミュニケーションが楽しく,大変感謝しています。特に就活の最初期は尋常ではない不安と焦りで正気ではいられなかったのですが,その時に受けたカジュアル面接を担当してくださった人事の方が常時笑顔の太陽みたいな人で,それで一気に持ち直しました。多分その人のことはこれからも忘れないと思います。

 

おわり

就活中は競プロで繋がって一足先に社会人になったFF競プロerに色々と相談に乗っていただきました。ありがとうございました。私にも何か聞きたいことがあればお答えしたいです。

内定先には明らかに即戦力とはほど遠い実力で採用してもらったと思いますし,ちゃんと戦力になって恩返ししたいという気持ちが強いです。がんばります。