総括
最高だった。マジでありがとう......。凶作のあとに豊作ありが経験則なので今期は大丈夫かなと思っていたが、大丈夫どころではなかった。いいアニメが多すぎて若干窒息気味。日常作品からラブコメ、意欲作、正統社会派作品とバラエティにも富んでいて楽しかった。
作品別感想
評価SSSS
前橋ウィッチーズ
アニメ史に燦然と輝くエポックメイキングな作品。アニメをずっと追い続けてきたわけじゃない自分が使うにはだいぶおこがましいけど、それでもこう形容せずにはいられない、そんな作品だった。本作品の影響を受けて、今後も似たような姿勢で物語を描くアニメが増えてほしい。
例えるならNHKが朝ドラで描くような社会派のテーマを美少女アニメのコンテキストに違和感なく取り込んで視聴者を魅了してみせた。オタクに都合のいいように人格を矯正されたキャラはいなくて、みんなそれぞれ実際に友人として付き合うには面倒くささや憎らしさがあり、それが非常に「リアル」に感じた。
特に印象的だったのは第8話。主要人物の一人であり、ヤングケアラーとして心身をすり減らしながら魔女修行に勤しむ三俣チョコが、「しんどい」を学校の大人に伝えたことをきっかけに行政の福祉サービスにつながり、少しだけ楽になるというシーンがある。このアニメは舞台となった前橋市も積極的に協力してPRを行っている町おこし的な色合いも強い作品なのだが、その作品が行政のサービスと繋がるという(些細ではあるが着実な)解決策を提示したという事実にかなりくらってしまった。解決に至るまでの描写も非常に丁寧でまったく説教くさくなくて、心が温かくなり、号泣してしまった。
8話の良さはこれだけじゃない。同エピソードにてチョコの家庭事情を聞いた北原キョウカは、それに比してちっぽけな悩みで苦しんでいた自分を激しく嫌悪してしまうのだが、それに対してこの作品は「主観的な悩みや苦しみは誰かと比べるものじゃない」というメッセージを打ち出すだけじゃなく、「それでも客観的に見たときにどちらがより苦しいかという問題に答えがだせることもある」という事実を仄めかしているように見える。本エピソードの最後になされたキョウカの決意表明にはそんなことを感じたし、普段自分も、より恵まれている人間が社会のためにハードワークをするべきであるという意見を持っているので、そこに強く共鳴してそこでも泣いてしまった。安易で無責任な相対主義に安住せず、そこから先を踏み出す勇気を備えた物語だった。
この作品のいいところは他にも山ほどある。ぜひ本編を見てほしい。せめてこのかっこいいOPだけでも見ていってほしい。
評価SSS
鬼人幻燈抄
不幸な因果に巻き込まれ鬼の力を得てしまった主人公、甚夜の視点から江戸から平成までを辿る壮大な和風ファンタジー。
この作品の好きなところは、物語の力を信じてひたすら物語に誠実なところ。登場人物をみればわかるが、キャラ売りなどかけらも気にしていなそうなキャラクターデザインになっている。その中身も例に漏れず、作品の世界観を壊すような、露骨にキャラ付けされたような人間はいない。みんな、時に醜く、時に美しく、その時代を精一杯生きる様を見せてくれる。何らかのメッセージがあってもそれを決して言葉にせず、丁寧に丁寧に、人物の行動、人物感の関係、その積み重ねによって描きあげるから心地よい。悲しく残酷な出来事もたくさん起こるけど、それは現実も同じだ。そんな出来事に対して作中の人物はその身いっぱいをつかって懸命に生きている。その過度な脚色のない丁寧な描写の積み重ねがこの物語にとびきりの優しさと儚さを与えている。
原作は2011年ごろから投稿されており、2016年には完結しているらしい。なるほど、最近の加速したアテンションエコノミーの影を一切感じないのはそういうことかもしれない。時間がゆっくり流れるから本当にここちよかった。EDテーマもヒルクライムが歌っててめちゃくちゃ懐かしい。連続2クールなのありがたすぎるよ。
評価SS
九龍ジェネリックロマンス
大人のロマンス×「懐かしさ」をテーマにしたSFという、夏の特大バフも受けてエモさ満点の作品だった。ヒロインの鯨井礼子はある日、想いを寄せる工藤発の引き出しから、自分と瓜二つの別人の女性と彼が仲睦まじげに写っている写真を見つけてしまう。
あまりに眩しい日々は、その終わりを予感させるから余計に苦しい、何も変わらないでほしい。そんな誰かの想いに呼応するかのように、妖しくも美しい街九龍は何度も同じ夏を繰り返す。自分は「懐かしい」という感情が一番好きで、よく定期的にこの最高に気持ちいい死にたさを味わっているので作品の雰囲気にかなり惹かれて良かった。
OP、EDともに作品のテイストにあっていてかなり気持ちいい(苦しい)です。
mono
かなり良質な日常アニメだった。日常アニメは底は高いけど天井はそこまで(なぜなら無難だから)という感じになりがちなんだけど、monoはそれを破った気がする。
まず最低限に、日常作品に徹していて、安っぽい主張をしなかったこと。主人公3人の女子高生が、思うがままに生活範囲を探検し、喜怒(?)哀楽全部使ってその体験を堪能する。とってつけたような薄っぺらい教訓を視聴者に投げかけたりしない。
そして上質な作画とカメラワーク、カット割。これが一番大きかったかも。詳しくないのでちゃんと言語化はできないが、かなり動的というか今ここにしかない瞬間を躍動感あふれる演出で描いていたように思う。
漫画家同士のあつまりや、明らかに非現実的なオカルト描写が本当にうけつけなかったんだけど、それを差し引いてなおこの評価になるくらいいいアニメだった。
OP、EDどちらも好きです。4,5月の山梨のイメージ。
評価S
日々は過ぎれど飯うまし
主人公の下宿先の家があまりにもでかすぎるのが嫌だったんだけど、それ以外は完璧だった。こんな上質な日常アニメがmonoと並んで2つも同クールにあったのが奇跡だと思う。主要人物5人のキャラが全員ちゃんと立ってたことで「みんなで」一緒に何をするということの尊さが際立っていたと思う。
モコ太郎の中の人スキナー説大好きだった。
アポカリプスホテル
雰囲気良し、ヤチヨ良し、設定良し、作画良しの優等生作品。1話を見た時は少女終末旅行的なもの寂しい感じになると思ってたけど全然違った。この最高に期待させる舞台設定から物語をどう展開するのか恐る恐る見ていたけど、結果的には無難なギャグにおちついたんだなという印象。物語の力強い主張、こだわりみたいなのがなかった(もしくは自分にささらなかった)のが惜しいし、あとは軽率にタヌキ星人一家への暴力描写があったもの安直だなぁと思っていた。
未ル
5つの異なる制作スタジオが作った話からなる全5話のオムニバス形式のアニメ。今の時代にはかなり珍しい形式な気がする。全てに共通するテーマは人間とロボットの関わりで、昨今その文字を見ない日はないくらいの隆盛を極めているAIについて切り込む意欲的な作品だった。各エピソードが1話しかないから全然突っ込んだ話はないけど、それぞれの話でそれぞれの切り口でロボットと人の関係を語っていて、そこに多様性があるのが心地よかった。
人々からの信頼が力になり、またそれに束縛されるという世界観で、ヒーローという職業がある社会の話。これがアテンションエコノミーに陥ってどのような帰結をもたらすかは想像に難くなく、その意味での意外性はなかった。
ただ展開がいつもまったくよめなくて、安心できる時間がほとんどなく心臓に悪い。ほとんど意図的に、工学的な気配を感じるほど巧妙に視聴者を飽きさせないプロットが練られているのを感じる。
あとはこのアニメの裏にある膨大な量の設定やその公開の仕方に少しアークナイツみを感じる。中国の良コンテンツにはこういうのありがちなんだろうか。コンテンツ供給が多すぎて普通の消費者は全部を消化できないという特徴がある。
ウィッチウォッチ
令和にスケダンが帰ってきて泣いちゃった。完全にスケダンですね...。逆ハーレムのラブコメでちゃんとオタクに人気があるのすごいと思う。
評価A
2クール嬉しい。本当に夏がよく似合う作品だと思う。残念ながら2025年現在、我々が「そこにすべてがあった」と信じてやまない夏は本邦から失われてしまったが、この作品にはその夏が確かにあると感じられる、それだけで十分に気持ちがいいアニメ。夏のイデア。
主人公とヒロインの恋愛関係が、ヒロインの抱える苦しみを救うというメサコン的な文脈でしか今のところ発生していないのが窮屈なんだが、これは駆け足でやらざるをえないアニメだから食傷気味になっているだけで、原作ゲームをプレイしているといくらか緩和されるんだろうか。いずれにしても、お互い別に一人でも何不自由なくいきていける二人が一緒に生きる意思決定をするというタイプの恋愛関係の方が僕は好きです。
OP、ED両方大好き。ああ、この夏にはすべてがある......
ロックは淑女の嗜みでして
演奏シーンは本当にかっこいい。あと主人公の声優さんの演技がとても上手くて、お淑やかなお嬢様と世の中クソ喰らえのロック全開口悪女の演じ分けが絶妙。でも中指立ててるところに毎回モザイクかかってるのはかなりダサいと思う。露骨でエロと百合で釣りに来てる感じもある(し、実際それで大量に連れてしまう)。結構人気だったイメージがあるので2期やるのかな?またロックレディの演奏を聴けるのを楽しみにしてます。
LAZARUS
も、もったいね〜〜〜!!世界が滅ぶというどちゃくそでかい問題を前にしてちんたらちんたらエピソード重ねてるのでスキナーが泣いてたし彼のメッセージも結局視聴者に全然届かなかった。ラザロのメンバーの活躍を大人気長寿ドラマみたいに描き続けたいのであれば(視聴者も見たいはず)、いきなり世界滅亡カウントダウンをしないほうが絶対に良かった気がする。それ以外は完璧だった。
2期の伏線もちゃんと貼ったし、次はうまいこと小さな事件を少しずつ解決していってほしいよ。
宇宙人ムームー
途中でリタイアすると思ってたけど思ったよりずっと面白くて毎週楽しみだった。2クールなの嬉しい。
頭のネジが何本か外れたとんちきな日常コメディものなんだけど、エピソードが更新されたら最速で確認したくなる変な魅力がある。純粋に話がおもしろくて、今回はムームーがなにをやらかすのかなとか、天空橋先輩はでてくるかなとか。
OPが好きです。ふつうの軽音部で知ったサバシスターが歌っててテンション上がった。
評価B
ある魔女が死ぬまで
むずかしい...。明確につまらなかったところはあげられないけど、最後までハマりきれなかった。主人公のメグの明るくおちゃらけた感じのキャラはいままでありそうでなかった気がして、それはすごく新鮮で良かったしおもしろかった。
ざつ旅
旅がざつなのは全然いいんだけど、安直な百合や安直なキャラ設定が口に合わない年齢になってきたのか、そこまで刺さらなかった。旅も日常の延長という感じがしなく、その回のために取ってつけたような問題を解決することが目的になっていて、必ずなんらかの教訓や成果を得る構図になっていることが窮屈に感じられた。
窪田等さんをナレーションに抜擢した旅の演出はとてもよくて、ご飯や旅館の描写には自分も行きたくなる魅力があった。